あの夏を生きた君へ




「大丈夫。」


「は?」


「迷ったりはしない。僕がついてる。」


そんなことを言われると、どう答えていいか分からない。

いちいち動揺してる自分が気持ち悪かった。




最初に通った遊歩道の出入口が見えてくる頃、空には淡いオレンジの光が射していた。



「恵には言ってあるのか?」


「何を?」


「ちづが、ここで探すのを手伝ってくれてることだ。」



言えるわけないじゃん。
幽霊と一緒にタイムカプセル探してる、なんて誰も信じない。


「言ってないのか?恵が心配するだろう?」


「…大丈夫だって。」


「大丈夫じゃないだろ!」


「あーはい、はい、言ってあるって!もう煩いなぁ!」


彼の方に顔を向けたあたしは息を呑んだ。


「……え…。」



彼の身体が透けていた。
どんどん薄くなって、朝の光が透過している。




「…時間みたいだな。」


「また、夜になれば見えるんだよ…ね?」


彼は頷く。


「いいか?ちづ。家族に心配かけるなよ?恵に言ってないなら手伝わなくていいから。」


それだけ言うと、まるで煙のようにスッと消えてしまった。




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