あの夏を生きた君へ








コンビニでおにぎりを選んでる時だった。


たらこのおにぎりに手を伸ばそうとしたら、横から奪われた。




「これだろ?」


自分で取ったくせに、あたしに渡してくる悠。

得意気に笑ってるのがムカつく。


いくら近所だからって、近所のコンビニでまで偶然会いたくないっての。


「ちづはたらこのおにぎり好きだもんなぁ〜、昔から。」



悠を見上げながら気づいてしまう。
コイツ、また背伸びた。




「…いつの話してんだよ!」


あたしはおにぎりを突き返して、梅干しのおにぎりを掴むと真っすぐレジへ向かう。






コンビニを出て、空に広がる薄桃色を見つめた。


奇妙な色だと思う。

でも、綺麗だった。



落下していく太陽、
あたしは夜を待っている。





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