あの夏を生きた君へ
夏祭りへ向かう人の流れの中で、あたしはあたしだけが一人ぼっちだと思った。
花火も、金魚すくいも、かき氷も大好きなのに。
大嫌いになってしまいそうだ。
小さい頃は、ばあちゃんと夏祭りに行った。
両親とも行ったし、悠とも。
……去年は愛美と二人で行った。
去年の夏は楽しかったなぁ。
今年の夏は…今年の夏は、ばあちゃんが倒れたり、幽霊とタイムカプセル探したり、散々な夏。
あれ…そういえば、あたしは彼の名前も聞いていない。
今頃になって、そんなことに気づく。
……名前、何ていうんだろう。
「ち・づ・る!」
その声とほとんど同時に、背負っていたリュックサックが後ろへ引っ張られた。
あたしはそのまま転びそうになる。