あの夏を生きた君へ
「愛美ぃ?思うよね?」
美季の声が僅かに低くなると、愛美は慌てて口を開いた。
「…うん。」
「千鶴なんてぇ大っ嫌いだよねぇ〜?裏切り者で嘘つきで。そうでしょ、愛美?」
「…うん。」
あたし、バカみたいだ。
本当バカみたいだ。
美季は勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
「だって!残念だったね、ち・づ・る!」
あたしが愛美に期待をする、
それを美季はちゃんと分かってる。
あたしの心を壊す方法を知っている。
もう、疲れちゃったよ。
こんなふうに傷つくのは、もう嫌なんだよ。
信じるのとか、期待すんのとか、もう…もういいよ。
「で、土下座は?」
美季が言った時、あたしの頬には涙が流れていた。
「え〜!嘘!?泣いてんの!?」
「ウケるっ!写メ撮ろうよ〜!」
「…泣けばすむと思ってんだ?」
次々に浴びせられる言葉が刺さる。
その間、愛美はオドオドとしていた。
泣き出したあたしを見て驚いたんだろう。
愛美が知ってるあたしは、気が強くて、悠をイジメっ子から守っていたあたしだ。
でも、もうそんな自分はどこにもいない。
もういない。