あの夏を生きた君へ
「ちづ、やっぱり何か変だぞ?」
そう言って、あたしの顔を覗き込む彼の瞳は驚くほど澄んでいる。
その瞳に見つめられると居心地が悪くて仕方ない。
胸の奥に何かが詰まっているような、可笑しな感じがする。
あたしは慌てて目を逸らして、
「煩いなぁ!」
と言うのがやっとだった。
彼は…ばあちゃんのことが好きだったんだろうか。
だから、幽霊になってでも約束を果たしにきたのか?
だから、ばあちゃんにその時が来るまで待っているの?
そんなことを考えてたら、どんどん腹が立ってきた。
すっごいイライラする。
ムカつく。
どっと押し寄せてくる感情に動かされるみたいに、あたしは足早になっていく。
「あれ?今日は怖くないのか?」
からかうように言う呑気な彼のおかげで、あたしの苛立ちは更に増していく。
悠のこと。美季たちのこと。愛美のこと。
ウザイ親に、腐った人間関係に、バカバカしい友情。
ばあちゃんのこととか、幽霊のこととか、タイムカプセル探しとか。
あたしの頭は、もうとっくにパンクしてる。
ムカつく、ムカつく、ムカつく!!
まるでリズムを刻むように胸の内で繰り返した。