あの夏を生きた君へ
展望台に到着すると、あたしは躊躇うことなく草だらけの細い道へ入っていく。
あたしの様子を見て、彼は驚いている。
今のあたしに怖いもんなんて何もない。
いつ、どこで死んだって構わないし、
むしろ若いうちに死ねるならラッキーじゃん。
自分の歳とった顔なんか見たくないし。
そうだ…そうだよ、あたしはずっと死にたいと思ってた。
楽になりたかった。
悲しいことや辛いことがない世界、
天国だろうが、地獄だろうが、この世界よりはきっとマシだ。
シャベルを杖の代わりにして、草や木に掴まりながら道なき道を進んでいく。
懐中電灯の明かりを頼りに闇の奥深くへ。
あたしの頭の中は“死”の文字でいっぱいだ。
自殺の名所なんて言われる橋がせっかくあるんだから、あの橋から飛び降りればいい。
簡単なことだ。
あたしが死んでも、きっと美季たちは泣かないだろう。
「マジで死んじゃったよ、アイツ」って笑うだけだ。
愛美はどうするかな?
自分を責めたりするかな?
泣いてくれるかな?