あの夏を生きた君へ
「ねぇ?」
「何だ?」
「あの世ってどんなところ?」
草を掻き分けて突き進むうちに、すっかり泥だらけ。
特に、手の平と足は酷い有様だ。
「あの世か…さぁな。」
「は?さぁなって…?」
「行ったことがない。」
あたしは草を掴みながら眉を寄せる。
行ったことねぇわけねぇだろ。
「幽霊のクセに?まさか、ずっとこの世を彷徨ってたとでも言うの?」
自分の話し方にトゲがあることくらい分かってる。
でも、イライラして止められない。
「あぁ。」
「…は?マジで!?ずーっと彷徨ってたの!?バッカじゃないの!」
誰か、この口を塞いでほしい。
あぁ、サイテーだ。
これじゃ八つ当たりだ。