あの夏を生きた君へ





「ねぇ?」


「何だ?」


「あの世ってどんなところ?」


草を掻き分けて突き進むうちに、すっかり泥だらけ。
特に、手の平と足は酷い有様だ。


「あの世か…さぁな。」


「は?さぁなって…?」


「行ったことがない。」


あたしは草を掴みながら眉を寄せる。

行ったことねぇわけねぇだろ。



「幽霊のクセに?まさか、ずっとこの世を彷徨ってたとでも言うの?」


自分の話し方にトゲがあることくらい分かってる。

でも、イライラして止められない。


「あぁ。」


「…は?マジで!?ずーっと彷徨ってたの!?バッカじゃないの!」



誰か、この口を塞いでほしい。


あぁ、サイテーだ。

これじゃ八つ当たりだ。





< 123 / 287 >

この作品をシェア

pagetop