あの夏を生きた君へ
「あ、そう。じゃ、捨てるしかないね。」
「…え?」
「あたし、食べる気なくなったから。」
コイツが見てたのは、あたしじゃない。
まさかのおにぎりだった。
それを勝手に勘違いして、バカみたいに慌てて。
「食べる気なくなったって…もったいないだろ!?」
「は?いやいやいや、幽霊に関係ないじゃん。」
ムカつく。本当ヤダ、ウザイ。あーウザイ!!
「ちづ!!」
「煩い!!!」
あたしは食べかけのおにぎりを古びたゴミ箱に投げ捨てた。
「……何やってんだよ。」
「は?」
彼の顔を見ると、今までに見たことがない顔をしている。
すごく怒っていることは、すぐに分かった。
でも、あたしには意味が分からない。
何でキレてんの?
キレたいのは、こっちだっつーの。
「拾え。」
「はぁ?」
「今すぐ拾え!!」
彼が声を荒らげて、あたしは思わずビクッと肩を揺らす。
彼の目は真剣だった。
真っすぐ、あたしを見ていた。