あの夏を生きた君へ

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春。

雪が積もったように咲く花が、とても綺麗でした。










「明子ー!」


「お兄ちゃん!」


「こんなに遠くまで来て。ここには入ったらいけないっていつも言ってるだろ。」



心配ばかりする兄を見て、私は「ふふふっ」と笑います。


「何だよ。」


「花が咲いてるの!」


「え?」


「見たこともない花でね、綺麗なの!幸生(ユキオ)くんが絵を描いてるの、こっち!」



私はさほど興味もなさそうな兄の手を引いていきます。


山には様々な花が咲き、木々の葉は風に揺れていました。






「ほら、見て。」





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