あの夏を生きた君へ
そんな不安な日々の中でも、幸生くんと私、小夜子ちゃんは変わらず神社で遊んでいました。
幸生くんは絵を描いたり、木に登ったりと一人で遊んでいることが多いのですが、おはじきを使って遊ぶ時は私と小夜子ちゃんに付き合ってくれました。
「お腹すいたなぁ。」
小夜子ちゃんは俯いて言いました。
「キャラメル食べたいなぁ。」
私は、その言葉で胸が痛くなります。
こんなに小さな子に、戦争をしているということが一体どのくらい理解できているでしょう。
みんな、お腹いっぱい食べたいのを一生懸命我慢していたのです。
「僕は握り飯が食いたい。」
幸生くんは落ちていた小枝を使って、地面に絵を描き始めました。
「わぁー握り飯だぁ!」
小夜子ちゃんが表情を輝かせると、幸生くんも嬉しそうに笑いました。
私もつられて笑顔になります。