あの夏を生きた君へ
「…二度と会えないわけじゃない。」
「本当?」
私が尋ねると、幸生くんは少し考えてから言いました。
「宝物を埋めよう!」
「え?」
「いつか、また会えた時に二人で開けるんだ。
僕の宝物と、明子の宝物を入れて、見つからないように隠しておくんだよ。」
「でも…どこに埋めるの?」
幸生くんは、「そうだな…」と呟いてから、再び考えているようでした。
その時、急にブワッと激しい風が吹いて、私は堪らず目を閉じました。
風の中で、私は幸生くんの声を聞きました。
先程のように、幸生くんの手が私の頭に触れた時です。
ゴォという風の音に紛れて、幸生くんは言いました。
「――――…。」
私が顔を上げると、得意気に笑います。
風はいつの間にか止んでいました。
「誰にも見つからないだろ?」
「…うん!」