あの夏を生きた君へ
翌日。
幸生くんと私は宝物を埋めました。
お互いに何を埋めたのかは知りません。
開ける時のお楽しみです。
「また会えるよね?」
「あぁ。」
「約束よ。」
「あぁ。でも明子はのろまだからな、心配だ。」
「のろまって言わないで!」
お喋りをしながら、
笑いながら、
宝物を埋めました。
本当はとても寂しかったけど、笑いました。
幸生くんも笑顔です。
二人とも、不思議と浮かれていました。
「また会えるよね?」
「しつこいなぁ。」
「だって!」
夕暮れの帰り道でも、私が同じことばかり言うので幸生くんは苦笑します。
でも、それからとても小さな声で、
「…僕は必ず戻ってくるよ。」
と、言いました。
けれど、あまりに小さい声だったので、私は聞き逃してしまったのです。
「何て言ったの?」
すると、幸生くんは顔を真っ赤にして、ずんずんと一人で歩いていってしまいます。
「幸生くん!どうしたの?」
「何でもねぇ!」
私は訳も分からず、朱色に染まる幸生くんの背中を追いかけていました。