あの夏を生きた君へ
防空壕に辿り着くと、中にはすでに近所の人たちや幸生くんたち家族の顔がありました。
「明子!」
「幸生くん!」
私と幸生くんは、
まだ眠いのか、しきりに目を擦る小夜子ちゃんを真ん中にして肩を寄せ合いました。
蒸し風呂状態の防空壕の中に、縮こまって座ります。
こんな時にお兄ちゃんがいてくれたら、どれほど心強いことでしょう。
外では凄まじい叫び声と爆撃音が続いています。
本当に…本当に日本は勝てるのでしょうか。
「勝った、勝った!」と言うけれど、本当に大丈夫なのでしょうか。
食べる物も着る物もなく、皆大変な思いをしています。
空襲だって、ほとんど毎晩なのです。
そんなことを考えていた時でした。
幸生くんが不意に呟いたのです。
「生きよう、何があっても。」
その言葉は、本当に心強く私の胸に響きました。
たとえ焼夷弾の炎に町が焼き尽くされようとも、私たちは生きているのです。
食べる物がなくても、着る物がなくても、生きているだけで充分でした。