あの夏を生きた君へ
右を見ても、左を見ても、赤い世界。
ぼたん雪くらいの火の粉が降っています。
何もかも、全てが燃えていました。
猛火から逃げようとする人々で溢れた町、それでも火は激しい勢いで迫ってきます。
私は母と手を繋ぎ、先を行く幸生くんたちの背中を追いかけました。
強烈な熱さ、地面からの熱気も凄まじく息をするのもやっとです。
次第に遠くなっていく幸生くんの後ろ姿、
人でごった返し、誰もが無我夢中で、私は幸生くんの背中を見失ってしまいそうです。
その時でした。
ギューー!!!
異様な音がして、空から何かが降ってきたのです。
「あっ」と思った時には、もうどうすることも出来ませんでした。
私の身体は飛び上がり、その瞬間母の手を放してしまいました。
前にいた人は即死、首から血を噴き出して倒れていくのを投げ出されながら見ました。
そして、私の頭にチカッと痛みが走りました。