あの夏を生きた君へ
背中に衝撃を受けて、自分が落ちたのだと何となく理解しながら痛みに顔を歪めます。
地面は熱く、倒れているのも苦痛で、ぼんやりしながら起き上がると顔に生温い液体が伝ってきました。
触れてみると、手は真っ赤。
べとっとした血の感触にうすら寒さを感じます。
でも、止血するものなんて何もありません。
恐ろしさと痛みで気が抜けてしまったのか、私はその場にただただ立ち尽くしていました。
周囲を見渡すと、私が知る町の景色はもうどこにもありません。
燃え盛る炎に囲まれて、次々と倒れていく人、人、人…。
赤ん坊を背負って逃げる母親の、背中の赤ん坊は燃えていました。
私の横を通り過ぎていった男の人は、投下弾が命中して倒れています。
血がどばどばと噴き出して死んでいく瞬間をこの目で見ました。
もう男女の区別もつかなくなった頭のもげた死体も道に転がっています。
私の足は竦んで、一歩も動けません。
痛む頭を抱えて、膝から崩れ落ちてしまいました。
たった一瞬で奪われていく命…。
私も、このまま死んでしまうのでしょうか。