あの夏を生きた君へ
この道の先に川があるはずです。
あと少し、あと少しというところでした。
突然、幸生くんが立ち止まったのです。
私は不安になりながら尋ねました。
「どうしたの?」
幸生くんも私も、肩で息をしています。
「…今。」
「え?」
「今、小夜子の声がした。」
そう言って振り返ると、私の肩を掴んで私の目を真っすぐ見つめました。
「明子、先に行ってて。」
「そんな…やだ!いい、一緒に探す!私も小夜子ちゃん探す!」
「明子!!」
幸生くんは、私から少しも目を逸らしません。
その瞳の奥には、強い決意がありました。