あの夏を生きた君へ
火の雨が降り、家屋は次々と燃えて崩れていきます。
B29のエンジン音も未だ聞こえていました。
川には既にたくさんの人がいます。
助かる、そう思った私の期待は、でも一瞬で消えていきました。
人の流れに押されて膝から下が川に浸かってしまった時です。
私は言葉を失いました。
川の水が熱いのです。
辺りを見ると、流れてくる浮遊物が燃えていました。
その中には、人の姿もあります。
川は、燃える町を映して赤く染まっていました。
それでも、熱さと喉の渇きに耐えかねた人たちが川へ飛び込んでいくのです。
まるで血の川、地獄でした。
私は必死の思いで川から這い上がろうとしました。
生きたい、生きたい…生きたい!
息が荒く、涙が零れてきます。
嗚咽を漏らしながら、地面に爪を立てました。
生きたい!