あの夏を生きた君へ
どのくらい時間が経ったことでしょう。
気づけば空襲も終わり、火も消えていました。
夜が明け、日が昇ろうとしています。
力尽きて座り込んでいた私は、のろのろと立ち上がりました。
辺り一面、茶色の世界。
何もありません。
焼け野原になってしまった町は遠くまで見渡すことができました。
たった一夜にして、何もかもを焼き尽くした炎。
町であった場所に足を踏み入れると、焼け跡はまだ熱いのです。
私の瞳から、また涙が零れました。
戦争の意味も、苦しさや辛さも、よく分かっていなかった私。
食べる物がなくても、
着る物がなくても、
毎晩の空襲も、
兄の出征も、
お国のためなら仕方がないとどこかで思っていた私。
バカでした。
本当に本当にバカでした。