あの夏を生きた君へ
もう見つからないかもしれない、という諦めさえ感じ始めた頃のことです。
その日も死体の片付けをしているトラックを見つけて、私と私の母、幸生くんのお母さんはじっと見つめていました。
すると、突然幸生くんのお母さんが、
「あ…。」
と、呟きます。
幸生くんのお母さんは、目を見開いて微動だにしません。
私は視線の先を目で追いました。
トラックの荷台に、こちらに顔を向けている死体があります。
肌は焼け爛れて茶色くなり、腕はだらりと垂れ下がっています。
始めは分かりませんでした。
でも、目を凝らしてよく見てみると、それが幸生くんだと分かります。
私は呆然としていました。
何も考えられない。
何も言葉が見つかりません。
「幸生ーーッ!!!」
横で幸生くんのお母さんが叫びました。
私は、その声をとても遠くに感じます。