あの夏を生きた君へ
「運ぶのは無理ですよ。」
「見つかっただけでもねぇ。」
「ここでお骨にしたほうがいいですよ。」
周りにいた人たちが言いました。
気づくと、私たちの周りには死体を焼いている人たちが何人もいます。
火を前にして立ち尽くす人たち。
声を上げて泣いている人もいれば、虚ろな目で燃えていく様子を眺めている人もいます。
私も、私の母も、幸生くんのお母さんもほとんど放心状態で、周囲の人たちに言われるがままでした。
あっという間に、幸生くんの身体に火がつけられました。
でも、なかなかよく燃えません。
少しずつ、少しずつ、炎に包まれていきました。
その様子を無表情で見つめていた幸生くんのお母さんが、狂ったように叫び始めます。
「幸生ーーッ!!幸生ーーッ!!ああぁぁーああーー!!!」
火に飛び込んでいこうとする幸生くんのお母さんを、周囲の人たちが止めています。
「いやあぁぁーーっ!!幸生ーー!!!」