あの夏を生きた君へ
外では、煩いくらいに蝉が鳴いていました。
私は、空を見上げます。
青い空には雄大な白い雲が浮かんでいました。
その青を、私は精一杯睨みつけました。
戦争は終わりました。
でも、幸生くんは返ってきません。
私たちの家も、小夜子ちゃんの右腕も、元通りにはなりません。
あの空襲の夜に死んでいった沢山の命も、二度と戻ってきません。
幸生くんも、他の人たちも、生きようとしていたはずです。
生きようとしていただけです。
なのに、どうして…。
なぜ、死ななければならなかったのか。
悔しくて、悲しくて、堪りませんでした。
瞳に映した青い空が滲み始めると、すっと涙が零れ落ちていきました。
私は、ひっそりと静かに泣きました。