あの夏を生きた君へ
グワァン、グワァンと今にも壊れそうな音を立てて回る扇風機を、ぼんやりと見つめていた。
夏は嫌いだ。
暑い、ただそれだけでイライラする。
蝉の大合唱も煩い。
畳の上にゴロゴロと転がっているだけでまとわりつく汗もウザイ。
「ちづ!退いて!」
ただでさえ虫の居所が悪いのに、お母さんのかける掃除機があたしの背中に追突した。
「そのままひいていいよ。」
「バカ言ってんじゃないの!邪魔だからダラダラしてないで!」
「あーもう煩い!」
あたしはチッと舌打ちをして重い身体を起こした。