あの夏を生きた君へ
「でも…どうして?どうして、そんなことまで知ってるの?」
涙でぼやける彼の顔。
あたしが生まれた日のことなんて、どうして?
その時、彼の瞳が揺れた気がした。
何も読み取れない表情を見つめていたあたしは、ある事に気づいてハッとする。
「まさか…ずっと、ばあちゃんの傍にいたの?」
ずっとこの世を彷徨ってたの?、
イライラしてたあたしがバカにして言った時、彼は「あぁ」と言った。
あの時は気づかなかったけど、まさか…。
あたしの問いかけに、彼は何も言わない。
ただ寂しそうに笑っただけだ。
でも、それで十分だった。