あの夏を生きた君へ










「でも…どうして?どうして、そんなことまで知ってるの?」


涙でぼやける彼の顔。



あたしが生まれた日のことなんて、どうして?


その時、彼の瞳が揺れた気がした。




何も読み取れない表情を見つめていたあたしは、ある事に気づいてハッとする。





「まさか…ずっと、ばあちゃんの傍にいたの?」




ずっとこの世を彷徨ってたの?、
イライラしてたあたしがバカにして言った時、彼は「あぁ」と言った。


あの時は気づかなかったけど、まさか…。





あたしの問いかけに、彼は何も言わない。


ただ寂しそうに笑っただけだ。




でも、それで十分だった。






< 185 / 287 >

この作品をシェア

pagetop