あの夏を生きた君へ
「…あたし、絶対見つけるから!宝物見つけてみせるから!」
あたしは涙を拭いながら言った。
どこかでテキトーに考えてた自分を、捨てる。
本気で頑張るから。
「ありがとう。」
彼が笑う、その度にあたしの心は泣きたくなる。
もう、分かっていた。
自分の気持ちを知ってしまう、こんなタイミングで。
「…アンタ、名前は?」
今更な質問だとは思う。
ここまで名前も知らずにいた自分に呆れる。
「ユキオ。」
「え?」
「羽村幸生(ハムラ・ユキオ)。」
初めて聞く名前を、あたしはゆっくりと心の中で呟いてみる。
「『ユキオ』ってどういう字?」
「“幸せに生きる”。」