あの夏を生きた君へ
「アンタ、夏休みの宿題どうなってんの?」
「知らないし。」
「知らないしって…。」
お母さんは呆れたとでも言いたげな顔をしている。
わざわざ掃除機のスイッチを切ってまで、強い口調で言った。
「学校は行かない、勉強はしない、そんなんでいいと思ってんの!?」
「煩いなぁ。」
「大木先生だって何度も電話してきてくださってるのに。
何か嫌なことがあるんだったら学校に行きたくない理由をハッキリ言いなさい!じゃなきゃ、こっちだって何にも出来ないでしょ!?」
学校へ行かなくなった日から夏休みまでの約1ヶ月、
あたしは一日も学校へ行かず、そのまま夏休みを迎えている。
心配性のお母さんはガミガミ煩いし、頑固なお父さんも怒りだす。
生徒から“真理子ちゃん”と呼ばれるオバさんの担任・大木先生からの電話も毎日のようにかかってきた。
「何かしてくれなんて言ってないじゃん!放っといてよ!」
最近じゃ、顔を合わせるたびお母さんはこんな調子だ。
「放っとけるわけないでしょ!一人娘が不登校になってんのに!」
あー煩い、煩い。