あの夏を生きた君へ
見つからなかった。
あれから一晩中、幸生の曖昧な記憶を頼りにタイムカプセルを探した。
穴を掘っては埋めて、掘っては埋めて。
泥だらけになるまで頑張ったけど、見つからなかった。
まぁ、そんな簡単に見つかるわけないか。
何かヒントでもあればなぁ…。
あたしはめちゃくちゃに疲れてたけど、不思議と嫌な気分じゃない。
朝の空気は澄んでいて清々しいと思うくらいだ。
泣きすぎたせいで目が痛いけど、それも何だか愛しい。
生まれ変わったみたいだ、と思う。
こんなに穏やかな朝があるなんて。
空の色。
陽の光。
鳥のさえずり。
緑の葉っぱ。
昨日までの自分が嘘みたいだ。
あたしは何だか可笑しくなって笑いだす。
ハミングなんかしてみたりして、生きてるってことを楽しんでみようと思う。
楽しんでみたい。