あの夏を生きた君へ
「…何?」
「あっ…いや…。」
「何だよ?」
「…ちづが素直だから、びっくりして…。」
何だ、それ。
でも、確かに、「ゴメン」も「ありがとう」も口にしたらむず痒かった。
あまりの言い慣れてなさに、自分でも失笑してしまいそうになる。
「何か変なもんでも食ったのか?急にどうした?」
何だと…。
軽くムカついた。
何て失礼な奴だ、このヤロー…。
「別にっ!そう思ったから言っただけ!」
急に恥ずかしくなってきて逃げるようにスタスタと歩きだすと、悠がそれを呼び止める。
「ちづ、ちょっと待て!」
「なにー?」
「アイツもさ。」
「え?」
アイツ?
「アイツも、ちづのこと探してんだよ。」