あの夏を生きた君へ
「調子良すぎないか?」
あたしの横にいた悠が言った。
悠は真顔で真っすぐ愛美を見ている。
「まるで、許してくれって言ってるみたいだ。」
愛美はそれを聞くと、あたしたちに背を向けて逃げるみたいに走りだした。
止まらない嗚咽を漏らしながら。
愛美の後ろ姿を見ていたあたしは、考えるより先に身体が動いていた。
「愛美!」
愛美がピタリと立ち止まる。
「許すとか、許さないとか、あたしはもういいよ!
だって、きっと…あたしも愛美の立場だったら同じだったと思うから!」
愛美の肩が上下に揺れている。
しゃくり上げる声も聞こえる。
「あたし、悲しかったし辛かった!でも、もういいやって!だって――…。」
愛美は、あたしの言葉を待たずに走りだしてしまった。