あの夏を生きた君へ
死にたいと思っていた。
死んでしまいたいと思っていた。
こんな世界なんか滅んでしまえばいい。
この教室に、例えば爆弾が仕掛けられていて、何もかも木っ端微塵に吹っ飛ぶシーンを想像すると笑いが込み上げてくる。
窓際の一番前の席で、
そんなことを考えてるあたしは狂ってるのかな。
いいや、違う。
狂ってるのは、アイツらのほうだ。
「うぉぉ!美季見てたらアソコが痛ぇ!」
「やぁだ!サイテー!」
耳に届くその声に、あたしは眉を寄せる。
「俺のアソコがぁぁ〜!シッコシコー!」
草野は大声で言いながら、わざとらしく悶えて、
「もう〜やぁだぁ〜!」
と言いながらも美季は笑っている。
「草野サイアク!」
「キモい〜!」
女子たちは草野に非難の声を浴びせる。
でも、彼女たちも本気で軽蔑してるふうではなく、笑っていた。
そして、それを草野も分かっている。
分かっているから、さらに調子に乗る。