あの夏を生きた君へ
「お母さ――…。」
「どこ行ってたの!?どれだけ心配したと思ってんの!?こんな泥だらけで…怪我してない!?」
言いながら、お母さんはあたしを抱きしめた。
抱きしめられて、お母さんの温もりに目頭が熱くなる。
小さい頃、悠と二人で神社へ行って迷子になった日を思い出した。
「お母さん…ごめんなさい…。」
あたしを抱きしめる腕の力が強くなる。
あたしは、この温もりをちゃんと覚えてる。
それに、匂い。
お母さんの匂いだ。
懐かしくて、温かい。
あたしの頬を涙が流れた。