あの夏を生きた君へ
「ねぇ、何か思い出さない?」
あたしたちに背を向けている幸生に言ってみるが、幸生は身動き一つしない。
あたしの視線の先を追いかけてビビってる悠はとりあえず放っておくとして、もう一度言ってみる。
「ねぇってば、今はアンタの記憶だけが頼りなの。」
幸生は相変わらず動かない。
そのうち、身体がふらふらと横に揺れ始めた。
「幸生?」
様子が可笑しい。
近づこうと一歩踏み出したところで、幸生はずるりと地面に崩れ落ちた。
「幸生!?」
あたしは息を呑んだ。