あの夏を生きた君へ
出来るだけ木陰を探して歩いた。
それでも、額や首に汗が浮かんだ。
団地の棟と棟の間を擦り抜けて、ブランコ、滑り台、朽ちて頼りないベンチしかない小さな公園を横切っていく。
そこで、こちらに向かって歩いてくる悠とばったり会ってしまった。
どうやら、悠は部活帰りらしい。
サッカー部のユニホームを着たままだった。
あの日以来、会うことも話すこともなかった。
同じ団地の、同じ棟の、あたしは5階、悠はすぐ下の4階に住んでいるというのに。
気まずいから会いたくなかったのだ。
でも、世話焼きな悠は、あたしが学校に行かなくなってからプリントや授業のノートを届けてくれた。
悠の応対をするのはお母さんで、あたしはいつも部屋に閉じこもって聞き耳を立てていた。
悠が、余計なことを言わないかどうか心配だったのだ。
プリントやノートを届けてくれることへの感謝、申し訳ないという気持ちよりも、
先にくるのは自分の保身。