あの夏を生きた君へ





「ちづ、何か見落としてることがあるんじゃないか?
もう一度よく思い出してみろよ。」




あたしは、辺りをゆっくりと見回す。




見落としてること…。




雪が降ってる…。

夏は降らない。



あたしが見落としてること。

幸生が見たもの。





季節外れの――…。





その時、あたしは忘れていたものを思い出した。


神社に気を取られるばかりで忘れていた、
始まりはあの写真だったのに!



慌ててリュックサックを開けて、あたしは写真を探す。


「ちづ!何か分かったのか?」


「これ!この写真!!」



幸生とばあちゃんが一緒に撮った、たった一枚の写真。

あたしはそれを悠に見せる。


「悠!この木、何の木だか分かる!?」


幸生とばあちゃんの間で柔らかそうな花を咲かせている木。

「この花!雪が積もったみたいに咲くんだって!ねぇ!?分からない!?」




お願い…もう頼りは悠だけだ……お願い…。





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