あの夏を生きた君へ
その時だった。
急に、強い風が吹く。
草木が揺れ、葉が音を立てた。
激しい勢いに、あたしたちは立っているだけで精一杯だ。
吹き荒れる強風の中でうっすらと目を開けて、あたしは自分の目を疑った。
だって…雪が降ってる。
「…嘘でしょ…。」
風が緩やかになり、あたしは舞い落ちる雪を手の平で受け止めた。
「…違う。」
雪じゃない。
それは、白い花びらだった。
「ちづ!あれ!」
悠が指し示した先に目を向ける。
地面に点々と白い花びらが落ちていた。
真っすぐに続く白線は、まるで道案内でもしてるみたいだ。