あの夏を生きた君へ






その時だった。


急に、強い風が吹く。


草木が揺れ、葉が音を立てた。

激しい勢いに、あたしたちは立っているだけで精一杯だ。



吹き荒れる強風の中でうっすらと目を開けて、あたしは自分の目を疑った。




だって…雪が降ってる。




「…嘘でしょ…。」


風が緩やかになり、あたしは舞い落ちる雪を手の平で受け止めた。



「…違う。」

雪じゃない。
それは、白い花びらだった。




「ちづ!あれ!」


悠が指し示した先に目を向ける。






地面に点々と白い花びらが落ちていた。



真っすぐに続く白線は、まるで道案内でもしてるみたいだ。





< 240 / 287 >

この作品をシェア

pagetop