あの夏を生きた君へ
悠が花びらを払い、あたしたちはその場所を掘った。
二人とも喋らなかった。
ただ夢中になって、黙々と掘り進める。
頭上で風に揺れる白い花が、そんなあたしたちを見ていた。
あたしは、いつまでもぐずぐずと泣いていた。
拭っても拭っても涙は止まらなくて、目に映るものがぼやけている。
「俺さ。」
悠が手を動かしながら口を開く。
その悠も、やっぱりぼやけていた。
「ちづに憧れてたんだ。」
「…え?」
クスリと笑って、ハナミズキを見上げる悠をあたしは見ていた。