あの夏を生きた君へ
「開けるよ。」
あたしは緊張しながら手を伸ばした。
簡単に開いてしまう箱、
悠が言うように中身の状態は良くないかもしれない。
不安を覚えながら、箱の中を覗いた。
「…え?」
中に入っていたのは、たった二つだった。
巾着と、硝子の瓶。
あたしは、まず巾着を手に取った。
巾着も黒ずんでいて元の色が分からず、やっぱり濡れていた。
おまけに、箱以上にカビだらけだ。
何が入ってるんだろう。
中からザラザラという音がする。
巾着を開けて、中身を広げる。
そして、あたしは、
これはばあちゃんが入れた宝物だろうと思った。