あの夏を生きた君へ





暑さも手伝って最高潮にイライラしているあたしは、悠を無視して通り過ぎた。



「ちづ!」


そう呼び止める悠に、本気でムカつく。

振り返って睨みつけてやると、悠は困ったように頭を掻いている。



「…ゴメン。」


「何が?」


「いや…だからさ…。」



何なの?コイツ。

「マジウザイし。」



再び背を向けて歩きだそうとすると、悠はやっと口を開いた。


「二学期から学校来るよな!?」


「はぁ?」


「…あんなのさ、気にすんなよ。事故みたいなもんだし。…俺も気にしてねぇから。」


「あんなのって?」


「いや…だから……キス。」



歯切れの悪い言葉と一緒に頬を染める悠を見て殴り飛ばしてやりたくなった。



ふつふつと込み上げる怒りを煽るように、ジリジリと蝉が鳴いている。




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