あの夏を生きた君へ
時をこえて、幸生に出会った。
時をこえた二人の約束が、あたしにたくさんのことを教えてくれた。
「ちづ、行けよ。」
顔を上げると、悠は晴れやかな表情で笑っていた。
「ここは俺に任せて行ってこい!」
「…っ悠、ありがとう。」
あたしは、おはじきを入れた巾着とハナミズキの絵を抱えて走りだした。
森の中を抜けて神社へ、険しい山道を下っていく。
息が切れて、心臓がどうにかなってしまいそうだ。
気持ちは焦るのに、身体は思うように動いてくれない。
草木も枝葉を広げてあたしの邪魔をする。
もたつく自分の足が憎らしい。