あの夏を生きた君へ
風を切って懸命に走る。
でも、病院に辿り着いた頃には、もう雲の間から光が射していた。
朝の光に包まれた病院の長い廊下を駆け抜ける。
あたしの足はもうふらふらで、身体中も悲鳴を上げていた。
病院は静かで、あたしの足音が響いてる。
瞳に映る世界は鮮明で、それでいて朝靄がかかっているような気もした。
呼吸が乱れて、心臓が激しく動いてる。
生きてるってことを、
全身で実感する。
ばあちゃんの病室の前まで来て、勢いよく扉を開けた。
すると、病室の中にあった視線があたしに集中する。
医師、看護師、
お母さんの姉である叔母さんたちに、
あたしのお母さん、お父さん。