あの夏を生きた君へ
「ちづ!」
お母さんが叫ぶ。
「っばあちゃんは!?」
喉が熱く息苦しくて、うまく声が出せない。
「夜中に急変して…。」
あたしは、ばあちゃんを見た。
白髪の頭、痩せ衰えた身体、深く刻まれた皺。
目の回りは黒くなり、肌の色は黄色い。
血色が良かったばあちゃんの頬、唇も、真っ白だった。
「ばあちゃん!」
あたしは駆け寄って手を握った。
温かい。
生きている。
眠り続けながらも、ばあちゃんは生きている。
でも、ばあちゃんを取り囲む皆は難しい顔をしていた。
皆、分かっていたんだ。
張り詰めた空気の中で、
あたしにも分かった。
ばあちゃんは、もう……。