あの夏を生きた君へ
「ちづ、ありがとう。」
あたしの横でお母さんが言った。
「ばあちゃん、安らかな最期だった。ちづがタイムカプセルを見つけてくれたから思い残すこともなかったのかもね。」
お母さんも空を見上げる。
目元は赤く腫れていて、今日までさんざん泣いたことが窺えた。
「…お母さん。」
「ん?」
「あたしを生んでくれてありがとう。」
「え?」
お母さんはすごく驚いているようだ。
瞬きを繰り返しながら、あたしを見つめる。
「あとね、あたしに『千鶴』って名前をつけてくれてありがとう。」
「な、何よ、突然!」
戸惑うお母さんに笑いかける。
「あたし、『千鶴』って名前に恥ずかしくないように、生きていくから。」
そう言うと、お母さんは呆然としてしまう。
でも、それから泣きっ面になって、あたしから顔を背けた。