あの夏を生きた君へ





「もう!急に何言いだすかと思ったらっ!突然どうしたの!?」


「言いたくなったから言っただけ。」



すると、お母さんは涙を拭いながらお父さんのもとへ駆け寄る。


早速、あたしの報告を始めるお母さん。

最初は仏頂面で聞いていたお父さんが小さな笑みを零した瞬間を、あたしは見逃さなかった。


何か、こういうの、照れ臭い…。






空を見つめて、語りかけてみる。





幸生。
あたしね、思うんだ。



森の中でハナミズキを見つけられないかもって諦めかけた時。

ずっと眠り続けたばあちゃんが最期に微笑んだ時も…。


風が吹いた。




あの風は、幸生なんでしょう?







空は何も言わない。


ただ、当たり前にそこにある。





空は何も言わない。

でも、それでいい。








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