あの夏を生きた君へ
悠は昔からそうだった。
お節介で、口煩くて、クソ真面目。
まるで、親みたいに。
あたしは、そんな悠がウザったくてしょうがない。
ちょっと頭が良いからって学級委員とか、
周りが悠に抱いている“しっかり者の優等生”っていうイメージだとか、本当鼻につく。
昔は、「ハルカちゃん」、「女みたい!」ってからかわれてビービー泣いて人の後ろに隠れてたクセに!
いい気になっちゃってさ。
気の遠くなるような暑さの中、ただただアスファルトの地面に目を向けて歩いた。
けれど、太陽の熱を受けた地面からの照り返しやダラダラと流れる汗が、容赦なくあたしの心を折っていく。
「…マジ最悪。」
親も、真理子ちゃんも、悠も、どうして放っておいてくれないんだろう。
ありがた迷惑とは、まさにこのことだ。
「あー死ね。つか、死にたい。」
もう、最近じゃ口癖のようになってしまった言葉だ。
人生に夢も希望もない。
生きてることは疲れるし、楽しくないし。
死んだら楽になれんのかな?
でも、きっと今よりはマシだろうなぁ。
あぁ、楽になりたいなぁ。
いつからだったか、漠然とした死への憧れが芽生え始めてから、あたしはそんなことばかり考えている。