あの夏を生きた君へ
あたしは、今でも時々、ばあちゃんと幸生に会いたくなる。
そして、そんな時は空を見上げるようにしてる。
あの青空の向こうで、二人に笑顔が咲いていてくれたらいい。
奪われた青春を、時間を、
取り戻せるように。
幸生。
つか、アンタねぇ、突然消えたりして何なの?
もーちょい空気読めっつーの!
おかげでこっちは大変だったんだからねっ!
文句の一つも言えないし!
あたし、アンタに言いたいこといっぱいあったの!
アンタのせいであたしは……好きだってことも言えなかったじゃん!
本当ムカつく!
初恋だったんだからね、バーカ!
アンタなんか…アンタなんか…
「バカヤロー!!」
突然、空に向かって叫んだあたしを見て、悠が驚いてる。
「ち、ちづ?」
「悠……悠って何で『悠』なの?」
「…は?え、何、何?説明!」
訳が分からないって感じで狼狽える悠。
あたしは空を見上げたまま言った。
「名前!何で『悠』って名前なの?」