あの夏を生きた君へ
車の窓ガラスから、流れる景色を見つめていた――。
「もう10年か…。」
「ん?何が?」
あたしはクスリと笑う。
「何でもない。久しぶりにこの町に来たからかな、昔のことを思い出したの。」
「昔のこと?」
「そう。ほら見て、あの制服とか。」
あたしが助手席の窓から示すと、
「あー!中学の制服!」
と、言いながら笑う。
「懐かしいでしょ?」
母校の制服に身を包んだ後輩たちが、街路樹の下を歩いてる。
まだ幼さの残る中学生に、あたしは思わず目を細めた。
あたしにも、同じ時代があった。
あれから、もう10年か。