あの夏を生きた君へ
「ねぇ?お土産って本当にこれでよかったの?」
信号が赤になり、悠はブレーキをかける。
車は緩やかにスピードを落とした。
「その質問、何回目?」
「だって…。」
「大丈夫だよ。うちのばあちゃん、それ好きなんだ。
目が無いんだよ。」
悠にそう言われても、あたしの不安はなかなか消えてくれない。
当然だ、初対面なんだから。
「…お身体のほうは大丈夫なの?」
「もう、すっかり。って言っても、歳だし、しょっちゅう入退院繰り返してるけどな。…何?緊張してんの?」
からかうような調子で言う悠に、あたしは溜め息を吐く。
「結婚式の時もお会いできなくて、何のご挨拶も出来なかったのよ。」
「仕方がないだろ?あの時、ばあちゃん丁度入院してたんだから。」
信号が青に変わる。
再び車は動きだして、あたしはまた窓の外を眺めた。
「…喜んでくださるかな?」
「土産?」
「それもあるけど……。」