あの夏を生きた君へ






ばあちゃんの家は、団地からそう遠くはない。


家々が密集するように立ち並ぶ下町にあって、細い道が複雑に入り組んだ一角にある。



年季が入った木造の平屋で、あたしのお母さんはそこで生まれ育った。



あたしが生まれてすぐにじいちゃんは死んだから、それ以来ばあちゃんはずっと一人暮らし。

一人で住むには、デカすぎる家かもしれない。




そういえば、ばあちゃんに会うのは久しぶりだ。


親が共働きだから、昔は毎日のようにばあちゃんの所で夕飯を食べて、ばあちゃんと一緒に眠っていた。



でも、中学生になると、あたしも色々忙しくて毎日が大変で、一人でカップラーメンを啜るような夕飯にも慣れてしまった。





外から眺めるばあちゃんの家は、そのせいかなんだか懐かしい気がした。












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