あの夏を生きた君へ
「久しぶりだね、ばあちゃん。」
「初めまして、千鶴です。
ご挨拶にも伺えず――…。」
「堅苦しい挨拶はいいのよ。」
おばあ様はにこりと笑って、
「それより、それは何かしら?」
と言った。
その視線は持参したお土産に向いている。
「本当に食い意地が張ってるよな。ばあちゃんの好物だよ。」
おばあ様はそれを聞いて嬉しそうに言った。
「キャラメルね。ありがとう。」
本当にキャラメルでよかったのか。
悠から聞いた時は、半信半疑だったけど…。
お手伝いさんが運んできてくれた紅茶を啜りながら、世間話をした。
紅茶には檸檬の輪切りが浮かび、悠が小さい頃の話で盛り上がる。