あの夏を生きた君へ






「久しぶりだね、ばあちゃん。」


「初めまして、千鶴です。
ご挨拶にも伺えず――…。」


「堅苦しい挨拶はいいのよ。」


おばあ様はにこりと笑って、

「それより、それは何かしら?」

と言った。



その視線は持参したお土産に向いている。



「本当に食い意地が張ってるよな。ばあちゃんの好物だよ。」



おばあ様はそれを聞いて嬉しそうに言った。


「キャラメルね。ありがとう。」




本当にキャラメルでよかったのか。
悠から聞いた時は、半信半疑だったけど…。






お手伝いさんが運んできてくれた紅茶を啜りながら、世間話をした。


紅茶には檸檬の輪切りが浮かび、悠が小さい頃の話で盛り上がる。





< 280 / 287 >

この作品をシェア

pagetop