あの夏を生きた君へ







玄関の引き戸を開けると、ばあちゃんの家の匂いがした。



「ばあちゃーん。」


サンダルを脱いで上がっていく。

ボーン、ボーンと鳴る壁に掛かった振り子時計が丁度3時を知らせていた。


「ばあちゃん?」



台所、居間と見ていくが、ばあちゃんの姿はない。




その時、涼しげな風鈴の音が聞こえた。




あたしは、その音に誘われるようにして、長く真っすぐな廊下を歩いた。


半開きになっている襖を見つけて覗いてみると、チリンチリンという風鈴の音と共に、ふわりと心地良い風を感じた。


その部屋は六畳の和室が三つ、襖で仕切れるようになって横に繋がった広い部屋だ。

かつては、じいちゃんとばあちゃん、あたしのお母さんを含めた五人姉妹の七人家族が布団を敷いて寝ていたのだろう。





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