あの夏を生きた君へ






ふわっと、また風が吹いて、ばあちゃんの真っ白な髪が流される。


量の少ない前髪が風で踊ると、ばあちゃんの広い額が露になった。



すると、肌の色より薄くなって浮かび上がっている傷痕が丸見えになる。




もう、いつのことだかも覚えてないけど何気なく聞いたら、ばあちゃんはそっと傷痕に触れながら、
「若い時の傷さ」と言って遠い目をしていた。

“若い時”とやらを思い出していたのかもしれない。










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